「新しい公共支援事業成果報告書」運営委員からのメッセージ

 


蓄積とつながりを、事業継続の力に

NPO法人まつえ・まちづくり塾 理事 長井ノ上 知子さんの写真

2年間にわたる「新しい公共支援事業」の取り組みが終了しました。私たちはそこから何を得たのでしょうか?
「新しい公共の場づくりのためのモデル事業」では、「マルチステークホルダー」がキーワードでした。地域の課題を見つめ、その解決策・改善策を事業として組み立て、実行していくためには、「多様な主体」との連携が欠かせないことをあらためて認識しました。
それぞれの事業には、新たな課題が目の前にあるかもしれません。この2年間の蓄積とつながりが、今後の事業継続の力になることを期待しています。






 


何を残せたか、次に何を生み出すのか、注目

NPO法人おやこ劇場松江センター副理事竹田 尚子さんの写真

短期間にあまりにも多くの資金が集中して投入されることに、不安とともに期待を持ち続けた2年間でした。日々の活動に忙殺されがちなNPOにとっては、計画通りの事業実施のみに追われる危険を伴いつつも、「中長期的な展望」と「未来につながる同業異業の連携」を手に入れる好機でもありました。
地域に何を残せたか、連携を継続できているか、次に何を生み出すのか、それらを行政や中間支援組織はどのように継続支援していくのか。2年間の事業実施期間を終えた今年度以降を特に注目していく必要があると思っています。

 



 


故郷を守るためには、垣根はない

認定NPO法人緑と水の連絡会議 事務局長和田 譲二さんの写真

「NPOと公共の新規の枠組みづくり」という、スピード感ある2年間のモデル事業に取り組んだ各地のキーパーソンには敬意を表します。
国庫補助の終了に伴い、ミッションの継続はその方々の思いに託されました。監査でうかがった隠岐地区では、官の立場の人が同時に民の役割をやりきっている様子を拝見し、故郷を守るためには垣根はないと感じました。その危機感をともにして、隠岐のみならず全県の市まち県職員さんが、自分(民)の意志で地元の活動に踏み込んでいくモデルなのかもしれません。私たちのような民設NPOとしても大歓迎のトレンドです。





 


多くの体験と苦労を糧に、一歩一歩進めよう

認定NPO法人あしぶえ事務局長有田 美由樹さんの写真

マルチステークホルダーとのつながり構築がこれからの原動力です。しかし、この連携体制をつくり上げていくには、共に目指す「将来ビジョン」や、人と人とが協力していくための「互いの感情や意見を受け入れる寛容性」と「アイデアや工夫を提案していく創造性」、そして「強いリーダーシップ」が必要です。
今回、2年間の事業を受けられた団体は、それぞれに多くの体験とご苦労をされたことと思います。しかし、一歩一歩進めましょう。「あしぶえ」も46年かかっていますが、まだまだなのです。これからです!





 


他の地域、分野にどう伝え、活かしていくか

生活支援互助ネットけあきの会 幹事森山 史朗さんの写真

今回、「新しい公共支援事業」の報告を受け、少子高齢化や過疎化等の問題を多く抱える島根県にとって、今後その重要性が増すシステムであると感じた。 隠岐の島での2つのモデル事業は、観光振興を公と民の協力で進める事業であり、組織を一般社団法人化するなど共通点もみられた。海士町のケースでのマルチワーカーについては、いろいろな分野で応用ができると感じた。また期間に限りのあるモデル事業では、移り変わりの早いソーシャルメディア等の事業は難しいとも感じた。
今後の課題としては、多くの成果を残したこのモデル事業を他の地域や分野にどのように伝え、どう活かしていくかだと感じた。






 


住民自ら参画するという機運を波及していくことが大切

本藤司法書士合同事務所本藤 三世子さんの写真

各団体ともに、2年間で特筆すべき成果が報告されている。この盛り上がりを3年目以降も継続するためには、協力団体の拡充、NPO等の人的増強、事業費の確保等々が必要だ。
「しまね社会貢献基金」や、このたび公募決定されたロゴマークとキャッチフレーズも大いに活用して、より広く県民にPRし、後継者と賛同者を増やす必要がある。
地域の課題解決は、行政のみならず、地域住民自らも参画するという機運を今後ますます波及していくことが大切と考える。

 




 


「原点」

島根大学法文学部准教授毎熊 浩一さんの写真

バブル…。「いきいき活動促進」という、短くも確たる歴史をもつ島根(の僕)からみた、この2年間の印象です。が、幸か不幸か、それもはじけた。いまは「原点」を見つめ直すいい時期なのかもしれません。ミッションにしたがう、事実で(を)語る、優先順位をつける、(時々でも)自省する、細部に“も”拘る、ネットはワークさせる、根源にも迫る、等々。何やら人生訓のようです。いや、組織も結局は人、活動するのも人、原点は同じなのでしょう。実際、以上は僕自身ギクッとするものばかり。人の振り見て我が振り…。これまた原点?





 


自立して事業推進する団体を、どう増やすか課題

前・山陰中央新報社特別論説委員(島根大学教育開発センター特任教授)藤原 秀晶さんの写真

この10年で、ボランティアやNPO活動に対する認識は大きく変化した。以前は行政担当者が「ボランティアで」と言えば「ただで」という意味だったし、NPOも「何の団体?」といぶかられ、協働といえば行政の下働きをすることだった。
さすがに今はそんなことは少なくなったが、行政が協働相手として力を十分発揮しているのか疑問だし、補助金を渡り歩くだけのNPOも多い。
地域課題解決を掲げ、行政を、地域住民を巻き込んで、自立して事業推進を行う団体をどう増やしていくのか。「新しい公共」後の課題が見えてきた気がする。






 


地域住民の意識改革へ、努力の継続が大切

山陰合同銀行地域振興グループ長西郷 克典さんの写真 国と地方の財政問題、伸び悩む景気、経済のグローバル化、進展する地方分権、社会環境の変化に伴うニーズの多様化等、私たちを取り巻く環境はより複雑化しており、新しい公共の担い手であるNPO法人等の役割は重要度ばかりか、難易度も増しています。
しかし、現状は担い手の活動の安定性・継続性・発展性に課題を抱え、大きな壁に突き当たっている気がします。これを打破するためには、今一度、地域資源(人材、金、モノ等)を見直し、行政、新しい公共、民間の各領域を明確にし、短期的には担い手の活動の収益基盤の構築、経営力・組織力の向上を図りながら、長期的には青少年教育も含めたあらゆる啓蒙活動による地域住民の意識改革に努力を続けることが重要と考えます。





 


ネットワークづくりで、課題解決に前進

中国労働金庫島根県営業本部南木 憲治さんの写真

新しい公共支援事業では、主に「寄附等に関する事業」および「ネットワークづくり事業」に関わりました。NPO活動に対する寄附は、震災時の寄附のように支援の対象者がイメージできる場合と違い、活動の対象となる要支援者や、事象の情報が乏しい中では簡単ではありません。活動内容はもちろんですが、取り組んでいる社会的な課題について、もっともっと発信して下さい。
ネットワークづくり、大変ですね。個々の団体の活動の充実と併せ、ネットワークづくりを通して、セクターとして力量を高めることで課題解決に向けて大きく前進できると確信します。これからの活躍に期待します。




 


見えてきた課題を解決、持続可能な仕組みを

飯南町企画財政課企画担当鳥屋ケ原 由紀さんの写真

「新しい公共支援事業」の報告を受け、行政や民間事業者、地域住民など、多様な主体が関わっているがために生じるさまざまな課題を抱えつつも、事業実施する上で整備された活動基盤やネットワークの広がりなど、多くの方が携わることで生まれた効果を実感している様子が感じられました。特に観光振興・買い物支援対策などについては、同じ課題を抱えている地域の今後の取り組みの参考となるのではないかと感じました。
今後は、今回の取り組みによって見えてきた課題を一つ一つ解決しながら、持続可能な仕組みづくりを進めていただければと思います。





 


新たに浮かび上がった課題、全体で共有を

川本町まちづくり推進課地域情報係長坂根 尚美さんの写真

行政の立場からこの事業に参画させていただきました。多様な主体により実施されたモデル事業では、NPO・地域・企業・行政などの関わり方は様々でしたが、これらの力を結集して事業を進めていく、そのエネルギーはどれほどのものだったろうと、関係の皆様のご奮闘に頭が下がるばかりです。2年という期間が適切だったのかどうかわかりませんが、この間に得られた成果だけでなく、計画途上に起こった想定外の出来事や、新たに浮かび上がった課題など、全体で共有することが大切だと感じています。「新しい公共」が目指すものは何だったのか、再確認も必要ではないでしょうか。






 


NPO団体、行政双方が変わらねばならない

(公財)ふるさと島根定住財団石見事務所長樋口 和広さんの写真

私がこの事業を通して感じたことは、以下の2点である。
まず、NPO等団体には、もっと高いプロ意識を持っていただきたい。申請時の事業内容や成果が、報告時にはほとんどの団体が縮小し、それでいて自己評価が高い。医師や大工が7割の出来で満足していたら、どうであろうか。
また、行政はもっと積極的に協働すべきと考える。今回、情報提供程度の初歩的協働に終わっているものが大半で、これでは協働先進県という評価を受けた島根県の名が泣くというものである。
地域課題解決のために「新しい公共」の枠組みを築き上げるには、今後も同様の事業を通して、双方ともに変化しなければならないと痛切に思う。



 


県民力が、地域の持続性を高める手掛かりに

島根県立大学名誉教授井上 定彦さんの写真

島根県に、地域のNPOをはじめ県民・市民活動を促進するための新条例がつくられて7年余。そしてこれを後追いする形になったが、「新しい公共」という名前の国の支援策も加わり、この2年余の間に、県民・市民活動は「点から面へ」と目的意識的に広がるという新たなチャレンジが進んでいます。
地縁・血縁型の長所を生かしながら、地域課題に即した「テーマ型コミュニティ」が地域「協議会」等の名前で広がり、「公助」と「自助」をつなぐ軸ともなる「共助」のネットワークが地域に定着していこうとしています。
この県民力・市民力が、日本全体の人口減少が懸念される中で、島根の「暮らしの質」、そして地域社会の持続可能性を高める有力な手掛かりになると期待しています。

新しい公共島根県運営委員会による評価

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