





江の川流域の森林関係者が植林、伐採、製材、チップ&ペレット製造、建築に至る「山の木から、木造住宅までに関わるすべての人」の緩やかなネットワークを構築。森の荒廃を食い止め、再生可能エネルギーとしての木質バイオマスなどに国産材を有効活用して地球温暖化防止に役立てようと、森林資源の豊富な同流域で「元気な森」を取り戻す活動を続けている。
江の川流域の森林の荒廃を食い止め、森林とともに地域も元気にしたい―。そんな志を持ってスタートしたのが「好木心の総合窓口」開設事業だ。
主宰するのは、流域住民を中心に約30人の仲間が集う「樹冠ネットワーク」。2010年4月の結成以来、化石燃料に頼らないエネルギーの普及、災害に強い山づくりに向け、森林が果たす役割の大きさを訴え、子ども向け森林教室や間伐材の活用、江戸時代の旧郷蔵修復など先人の知恵に学ぶ活動を実践している。
「好木心の総合窓口」の目的は“森林”をテーマにしたネットワークづくり。流域の江津市、邑智郡川本、邑南、美郷町の行政、森林組合、企業、団体、住民グループなどと連携。これまで交流がなかった個々を結び付けることで課題を共有し、協力し合う関係を築き、森林の将来を考えようという発想だ。会員らは「森林を守ろうとしても、所有者だけでは無理。流域住民が力を合わせ、小さなことでも行動していきたい」と活動の意義を力説する。
「新しい公共」の指定を受けて昨年度、流域の製材所や木材チップ工場、炭窯などの現場を巡るバスツアーのほか、江の川周辺の地域資源をテーマにした意見交換会や講演など、一般から参加者を募って計4回のイベントを開催し、森林の持つ魅力を肌で感じてもらった。そして1年間の取り組みを発展させ、今年度は「森のファンづくり」をテーマに活動。間伐材を使った木工教室や、流域の共通課題である放置竹林の活用などを計画している。
森林を取り巻く環境は厳しい。安価な輸入材に押され、国産材が売れない状況が続いている。仕事として成り立たない林業の担い手が減り、若者が土地を離れ、高齢化が進む。伐採期を過ぎた樹木が放置され、さらに森林が荒廃するという悪循環。会員らは「簡単に解決できないことも多いが、江の川流域の森林に人一倍愛着を持った人たちのネットワークを生かし、森を守り、地域の活性化を生み出す仕掛けを考えたい」と長期的な視野で構える。
(写真左:加工場で、古里の森から切り出された木材について説明を聞く人たち、写真中央:「元気な森と人の集い」で発表するネットワーク会員ら、写真右:間伐材を使った木工教室)
POINT:「森のファン」を増やす活動に取り組んでいきたい
事業の協働で構築した各団体のネットワークを、今後につなげていくことが大切。活動の方向性としては、林業経営と環境を融合させたい。仕事として成り立つ林業の需要を掘り起こし、さらに活動を広めていくためにも、森林に興味を持つ「ファン」を増やす努力を地道に続けていきたいと思います。
樋口 千代子さん
課題を共有、流域の森林環境を整備
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