チャレンジNo,11地域の将来見据え、行政と住民の「つなぎ役」担う

里山コミッション

飯南町を示した島根県の地図

チャレンジナンバー11の見出しロゴ画像

チャレンジナンバー11のメイン画像、有機農業研究会の会員から、無農薬栽培の講習を受ける里山コミッションの会員

「里山コミッション」

古い町並みから商店が消え、空き家が目立つ。地域は過疎高齢化により販売マーケットの存続が危ぶまれ、産業の中心である稲作も放棄地が増えている。1998(平成10)年に、将来を見越した双方向通信のできるCATV網が整備され、NPO法人を中心としたネットワークで有効利用し、高齢者が容易に買い物ができる、安心して暮らせるシステムの構築に向け地域課題の解決を目指している。

過疎地の生活支援、産業創出を柱に活動

広島県境の飯南町は、標高1,000㍍級の山々に囲まれた県内有数の高原地域。人口6,000人弱、高齢化率は40%を超す。

2012年4月にNPO法人を設立した背景には、深刻な高齢化、過疎化がある。「仮に道州制が実現すれば、現在のようなきめ細かな行政サービスは難しくなり、地域が埋没する懸念がある。将来を見据え、第二の役場的な役割の組織が必要と考えた」と松田辰志副理事長は熱っぽく話す。

事業の柱は、過疎地での生活支援と、地域資源を生かした産業創出だ。NPOは実施主体ではなく、あくまで行政と住民の“つなぎ役”と心得、各種研修や勉強会を開催して実践者の開拓に当たる。生活支援として、まず取り組んだのが「買い物サービス」の仕組みづくり。日常の買い物に不自由する高齢者らの利便性アップとともに、地域経済の活性化にもつなげようという狙いだ。まだ具体化には至っていないが、町内の郵便局などと協議を続けている。また2012年6月、若者を対象にしたリーダー育成勉強会をきっかけに、20~30代の15人が「赤とんぼ」を結成し、地区の高齢者世帯には過酷で困難な除雪の奉仕作業を行うこととなった。

産業創出では、4年前に発足した有機農業研究会の取り組みを基に、新たに「町循環型農業研究会」を発足させ、リンゴやブルーベリーなどの無農薬試験栽培を試みた。またPRの一環として広島で催した「飯南特産市」では、無農薬野菜が高い人気を得、会員たちは「さらにニーズの把握に努め、儲かる農業を実現させたい」と張り切る。田舎体験観光などに注目が集まる中、町を挙げて取り組むグリーンツーリズム、森林セラピー等の事業とも連携し、交流人口の拡大につなげていく考えだ。

発足当初は、行政や各団体等との連携不足もあり、NPO法人の役割自体を否定されたこともあったが、地道な活動が功を奏し、多くの仲間(サポーター)と団体(サークル)が立ち上がった。会員らは「これらの力を束ねながら、一歩ずつ進んでいきたい」と前を向く。

収穫風景広島で開いた「飯南特産市」。新鮮な無農薬野菜を求めて大勢の人が訪れた

 (写真左:収穫風景、写真右:広島で開いた「飯南特産市」。新鮮な無農薬野菜を求めて大勢の人が訪れた)

メンバーから一言

課題解決に取り組む参加団体の図

松田辰志さんの写真

POINT:活動をPR、パートナーの輪を広げたい

新たなグループが結成され、さまざまな活動の輪が広がりつつある一方で、「行政がやるべきことを民間がするのか」という声もあり、中間支援組織に対する理解も浸透しているとは言い難い。このため、今後一層、活動の周知PRに努め、さらにパートナーの輪を広げていきたい。
松田  辰志さん

【主な活動】

健康で農業に従事、田舎生活を満喫

い~にゃん暮らしサポート情報ネットワーク会議

情報の一元化と高齢者等の生活支援ができる情報化の検討、特にCATV回線を活用した情報システムの構築

生活支援サービスネットワーク部会

高齢者等の生活を支える仕組み、特に買い物サービスの組織づくり

い~にゃん塾

  • 若手農商工業者を中心とした産業創出に向けた勉強会の開催
  • 農産物等の提供システムの構築(講演会、組織化)
  • 都市交流事業の実施(酒造イベント、朝市参加)
  • 文化伝承事業の実施(しめ縄づくり、みそ加工技術の習得)

【問い合わせ先】

〒690-3513 飯石郡飯南町下赤名880-3
電話番号:(0854)76-2871

事業の成果と課題

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