助成金との上手な付き合い方
一般的にNPOやボランティア団体の資金源は、1.会費、2.寄附金、3.自主事業収益、4.助成金・補助金、5.委託費の5つに分類されます。
委託費や助成金・補助金は一度に入ってくる金額が大きいので調達効率は高いですが、いつ予算を打ち切られるか分からなかったり、助成期間が決められているので安定性に欠ける財源だと言われています。また、使途が制限される場合が多いため自由度が低い財源です。
一方、会費や寄附金は会員や寄附者一人あたりの金額が小さいので調達効率は低いですが、継続性が高いため安定していて、自由度も高く使いやすい資金源であると言えます。また、会員や寄附者はお金以外にも、ボランティアなど別の形での支援も期待できます。調達効率が悪いからと言って決して無視できないのが会費や寄附金です。
そして、安定的な資金源を確保するためには、自主事業収益を高めることも重要です。地域の課題解決や地域資源を活かした地域活性化のため、ビジネス的手法を用いて収益を確保しながら事業を継続させるコミュニティビジネスやソーシャルビジネスもその一例です。しかし、受益者から収益を確保できる事業ばかりとは限りません。
したがって、活動の継続性を高めるためには、5つの資金源をバランスよく確保し、安定的な組織運営を心がけましょう。
助成金の大きな特徴は、比較的まとまった資金が調達できる一方で、あくまでも一時的な資金源であり、制限や制約が多いことです。これらの特徴を知ったうえで、上手に使う必要があります。
団体の体力を強化したり、活動基盤を整備する事業、今後のステップアップにつながる事業、もしくは一時的なスポット事業に向いている資金源です。
また、助成金は資金の提供を受けるだけでなく、その事業でしっかりとした成果を出せば、その実績は団体としての信頼性の向上につながります。逆に、成果が出ない場合は不信感を持たれてしまう「もろ刃の剣」です。
だからこそ、団体内でよく話し合い、議論を重ねた上で、成果を意識した事業計画を立てることが重要です。
①まとまった資金が調達できる
②一時的な資金源である
③審査基準が設けられている
④様々な制限や制約がある
⑤精算払いの場合が多い
助成金は、ある程度まとまった資金が調達できるうえ、借入金と違って、原則返済不要です。しかし、だからこそ、助成事業による成果が求められます。申請時に約束した成果が得られなかったり、対象外の経費を使ったりすると、返金しなければならない場合もあります。まとまったお金が入ってくる一方で、それだけのお金を使いこなし、成果をあげなければなりませんので、団体内での合意形成としっかりとした事業計画が不可欠です。
助成金には助成期間が設けられており、単年や2~3年など、助成期間が短い場合がほとんどです。何年も出し続けてくれる助成金はありません。また、短い助成期間で成果を出さなければならず、その成果をどう活かしながら、助成終了後も事業を継続させていくのか、視野に入れておかなければなりません。「金の切れ目が、事業の切れ目」にならないように、助成金以外の資金源が確保できるかどうか、助成終了後の将来像をしっかり描いておきましょう。
採択するかどうかは、助成側が決定します。申請したからと言って必ず採択されるわけではありません。大抵の場合、予算総額が限られており、他団体と競合することになります。さらに、一定以上の審査基準をクリアしないと採択されません。審査基準は助成金によって異なりますが、1.目的の妥当性、2.事業計画の実現可能性、3.組織力、4.事業による成果などが主な項目です。これ以外に、予算の整合性、先駆性・独創性、継続性、団体の将来性、熱意などが加味される場合もあります。また、書類による審査だけでなく、公開プレゼンテーションによる審査も増えています。その助成金の目的と助成基準、審査方法をしっかりチェックしましょう。
助成金には対象団体、対象経費、助成率、助成額など様々な制限が設けられています。また、申請した事業内容を忠実に実行しなければなりません。もし変更が生じる場合は、必ず助成団体に連絡・報告し、許可を得た上で、事業変更を行いましょう。事業終了後、どんな成果があったか、どんな経費を使ったのか、実績報告書や精算書、さらに領収書を求められる場合も少なくありません。こうしたことから、助成金をもらうことで、かえって自団体の本来の目的や方向性とズレてしまう可能性があるので注意しましょう。場合によっては、本来やるべき活動を圧迫することにもなりかねません。このため、自団体がやるべき事業の中で助成金を得て行う事業の優先順位が低い場合は申請を見合わせる決断も必要かもしれません。
助成金制度によって助成金が支払われる時期が異なります。全額前払いの助成金は珍しく、はじめに一定割合を概算払し、残りは事業終了後に精算払いされる場合がほとんどです。事業終了後に全額支払われる場合もあります。一部でも支払いが事業終了後になる場合は、それまで事業費を立て替えなくてはなりません。 また、助成率も助成制度によって異なり、自己負担金が求められる場合もあります。こうした資金繰りが可能かどうか自団体の資金力を確認しておきましょう。
申請書を書く前に、団体のミッション(使命)と解決すべき課題や背景とを照らし合わせながら、「なぜ」その事業が必要なのか整理し、根本原因を突き止めましょう。その上で、「何を」すべきか決定し、「どのように」実現していくのか、具体的な事業計画を練っていきましょう。
「やりたい事業」ではなく、課題や背景に裏付けられた「やるべき事業」を洗い出しましょう。
1.【背景】自分たちの活動の背景や解決すべき課題は何か
2.【根本原因】その課題の根本原因は何か
3.【解決策】そして、根本原因を解決するための具体策は何か
4.【成果】その具体策(事業)が成功すると、社会にどんな成果をもたらすか
助成金を獲得して行う事業は、比較的規模の大きな事業になります。そのため、団体内での合意形成は不可欠です。団体内での検討を繰り返し、しっかりとした事業計画を立てるためにも、時間的余裕をもって申請作業を進めましょう。
*事業計画の棚卸、「想い」の整理には、『「想いをカタチにする」7つのステップ』をご活用ください。
その助成金の目的や対象団体、対象経費、事業期間、助成金額などの基本的な情報を把握しましょう。採択後のトラブルや思い違いを防ぐ意味でもしっかり確認し、不明な点は助成団体に問い合わせましょう。
また、申請に必要な書式や添付資料、提出期限を確認し、早めの準備を心がけましょう。過去の採択事例や審査基準、審査方法をチェックし、ストライクゾーンを把握した上で、企画書を提出しましょう。
事業を実施する上で、経費がいくら必要か、緻密に計算し計画を立てましょう。
対象経費については、できるだけ見積を用意しましょう。
そして、事業内容と経費の整合性、事業成果と経費の整合性をチェックし、費用対効果が説明できるようにしておきましょう。想いだけでは説得力に欠けてしまいます。
助成期間終了後の事業計画、資金調達について、しっかりと説明できるようにしておきましょう。「金の切れ目が、事業の切れ目」では、採択は難しいと認識しておきましょう。
また、単発のスポット事業の場合は、その事業成果が、今後の団体運営や社会へどう役立つのか説明できるようにしておきましょう。
団体の歴史や想いが大半を占め、具体的な事業計画が書かれていないもの。
また、長文で埋め尽くされた申請書より、ポイントを絞って、できるだけ箇条書きにしましょう。
良さそうな言葉やフレーズが並べられていて一見すばらしい申請書に見えるが、よく読むと何が言いたいのかわからないもの。何が一番伝えたいのか、絞り込むことが重要です。
事業の成果が、事業期間や経費に比べて大きすぎるもの。
事業内容や期間、成果と経費が一致しているかチェックしましょう。
事業の背景や成果が見えにくかったり、専門用語ばかりで理解が得られにくいもの。
一般的に小学校5年生でも分かるくらいの表現が良いとされています。専門分野以外の方に事前に見てもらい、理解できるかどうか確認してみましょう。
申請書での誤字、脱字、計算ミスなどの申請書は、事業遂行能力が疑われる場合もあります。提出前に読み直しをしましょう。
また、手書きの申請書の場合、雑な字で読めないケースがあります。これでは、申請に対する姿勢が疑われてしまいます。手書きの場合は、特に丁寧に書きましょう。
①団体のミッションと事業計画、予算がきちんと連動しているか確認する
②文章の誤字、脱字がないか、複数人で読み合わせをする
③専門外の人にも読んでもらい理解できるか確認する