「森と畑と牛と」編集人・面代真樹が、食物と動物と人との間にあるものについて、ふたつの本を案内しながらお話します。
ひとつは、宮沢賢治の生前唯一の童話集『注文の多い料理店』。
その序文の締めくくりにはこう記されています。
「これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません」
《すきとおったほんとうのたべもの》ってなんなのでしょう。そして、《どんなにねがうかわかりません》というほどの切実な思い、賢治の願いとはなんだったのでしょう。
私たちは、童話を「つくり話」「架空」の話だとして、山猫や狼や森が語りかけたりすることになんの違和感も感じることなく、楽しみます。しかし、もしそれが「架空」ではないとしたら……。賢治はこのことについて「たしかにこの通り心象の中に現れたものである」「偽でも架空でも窃盗でもない」などと、もどかしげに書いています。
これらの問いに、レーン・ウィラースレフの『ソウル・ハンターズ〜シベリア・ユカギールのアニミズムの人類学』(奥野克巳ほか訳・亜紀書房)を読み進めることで、せまっていきます。