労務管理についてのQ&A

質問

■ Q1
就業規則を労働基準監督署に提出するべきでしょうか?

■ Q2
正職員・契約職員・パートタイマー(アルバイトを含む)別の規則を作る必要がありますか?

■ Q3
就業規則の中に「法定休日」は必ず明記が必要ですか?

■ Q4
労務規定として作成の必要がある書類はどんなものがありますか?

■ Q5
年次有給休暇を買い上げる際の時間単位はいくらにすればよいですか?

■ Q6 
育児休業取得者の年次有給休暇について取り扱いを教えてください。

■ Q7
年次有給休暇は、どのように付与すればよいでしょうか?

■ Q8
時間外手当は、どのように支払えばよいのでしょうか?

■ Q9
時間外の会議が残業手当にあたりますか?

■ Q10
割増賃金はどのようにして算出しますか?

■ Q11
NPO法人も、36協定を締結する必要がありますか?

■ Q12
保険料等で財政的に厳しいのですが、解決策はありますか?

■ Q13
賞与支給時の社会保険料等の控除について教えてください。

■ Q14
定年退職者の社会保険は、どのように扱えばよいのでしょうか?

■ Q15
労働保険・社会保険等に加入が必要な対象は誰ですか?

■ Q16
役員の社会保険加入についての要件がありますか?

■ Q17
産前産後期間中の社会保険料は払う必要がありますか?

■ Q18
新規に職員を雇用する際は、どのようなことに気をつければなりませんか? 

■ Q19
スタッフの休憩時間について、定めがありますか?

■ Q20
マイナンバーの提出が必要な場合はありますか?

■ Q21
雇用調整助成金とはなんですか?

■ Q22
有償ボランティアへ支払うのは給与でしょうか?謝金でしょうか?

 

回答

■ Q1
就業規則を労働基準監督署に提出するべきでしょうか?

■ A1
常時10 人以上の労働者(パートタイム労働者を含む)を使用する使用者は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければなりません。 【労働基準法 第89 条】
【その他 気を付けたいこと】
・就業規則を変更した際にも届出が必要。
・就業規則は、労働者に「周知」させることが義務付けられている。
ちなみに、36協定(時間外・休日労働に関する協定)は、労働者が一人でもいて、時間外労働と休日労働の協定書は、所轄の労働基準監督署へ届出をして初めてその効力が発生します。

 

■ Q2
正職員・契約職員・パートタイマー(アルバイトを含む)別の規則を作る必要がありますか?

■ A2
正職員・契約職員・パートタイマー(アルバイトを含む)別の規定を作成することをおすすめします。
正職員の就業規則のみ作成して、あとは、個別の契約によるということもできなくはないですが、トラブルになる可能性がありますので、「正職員用のもの」と「正職員以外のもの」の2通りを作成するのも一案です。

 

■ Q3
就業規則の中に「法定休日」は必ず明記が必要ですか?

■ A3
法定休日は必ずしも特定する必要はありませんが、法定休日を特定しておかなければ、「休日労働を行った場合の割増賃金の計算を正しく行えない」という問題が発生します。
また、厚生労働省も「法定休日と法定外休日を区別し、就業規則に記載することが望ましい」と伝えています。

 

■ Q4
労務規定として作成の必要がある書類はどんなものがありますか?

■ A4
労働者が10名を満たないうちは就業規則の作成・届出をする必要はありません。しかし、就業規則が作成してあれば、トラブルになることが少ないです。
厚生労働省は「モデル就業規則」を作成しています。
また、労働者の人数に関わらず、「労働者名簿」、「賃金台帳」、「勤務時間のわかるもの(押印のみはNG)」は必ず用意する必要があります。

 

■ Q5
年次有給休暇を買い上げる際の時間単位はいくらにすればよいですか?

■ A5
年次有給休暇を使用した際に支払う賃金以上の金額を支払えば問題ありません。
〔年次有給休暇中の賃金は、次の3 つのうち、そのいずれかを支払わなければなりません〕
(1)平均賃金
(2)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
(3)健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額 ※労使協定が必要
上記3 つのいずれの場合も、時間単位年休の場合は、その日の所定労働時間で除して得た額とします。
【労働基準法第39 条7 項、則25 条】

 

■ Q6 
育児休業取得者の年次有給休暇について取り扱いを教えてください。

■ A6
〔付与について〕
育児休業した期間は、出勤率の算定上出勤したものとみなします。
【労働基準法第39 条第8 項】
〔使用について〕
年次有給休暇は、労働義務のある日についてのみ請求できるものでありますから、育児休業
申出後には、育児休業期間中の日について年次有給休暇を請求する余地はありません。
【平成3 年12 月20 日 基発712 号】

 

■ Q7
年次有給休暇は、どのように付与すればよいでしょうか?

■ A7
年次ごとに所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、次の表のとおり勤続年数に応じた日数の年次有給休暇を与えなければなりません。

労務Q7

・当該年度に新たに付与した年次有給休暇の全部又は一部を取得しなかった場合には、その残日数は翌年度に繰り越されます。
・年次有給休暇(繰越し分を含む)のうち、5日を超える分については、労使協定を締結し、当該協定の定めるところにより年次有給休暇の時季を指定することがあります。この場合において労働者は、会社が特に認めた場合を除き、当該協定に基づき年次有給休暇(「計画年休」という)を取得しなければなりません。
・法人は、労使協定に定めるところにより、前条の年次有給休暇の日数(繰越し分を含む)のうち、1年度につき5日を限度として、1時間を1単位として、年次有給休暇を付与することができます(時間単位年休という)。
・更新日については、雇入れの日から起算して6 か月経過した日の翌日に最初の付与、その後1 年ごとに更新が必要です。
・法人は、年次有給休暇の付与日数が10日以上労働者に対し、その日数のうち5日については、付与日から1年以内にその時季を指定して付与しなければなりません。(法人は、時季指定に当たっては、労働者の意見を聴取し、その意見を尊重するよう努めなければなりません)
【労働基準法第39 条】

 

■ Q8
時間外手当は、どのように支払えばよいのでしょうか?

■ A8
1日8時間、週40時間を超えて労働させた場合は、時間外労働に対する割増賃金(2割5分以上)の支払いが必要です。【労働基準法第37 条】
なお、深夜(原則として午後10 時~午前5 時)に労働させた場合は、深夜労働に対する割増賃金(2割5分以上)の支払いが必要です。【同条】
法定休日(週1日または4週間に4日)に労働させた場合は、休日労働に対する割増賃金(3割5分以上)の支払いが必要です。

 

■ Q9
時間外の会議が残業手当にあたりますか?

■ A9
1 日8 時間、週40 時間を超えて労働させた場合は、時間外労働に対する割増賃金(2割5分以上)の支払いが必要です。【労働基準法第37 条第1項】
よって、月給者であれば125%の残業手当、時給者であれば当該時間の100%に加えて25%の残業手当の支払いが必要となります。
当該「会議」が自由参加であれば残業扱いは不要ですが、事業上、強制参加であったり、業務上の必要性があるもの、業務の遂行に欠かせないものであれば、残業手当の支払いが必要となります。

 

■ Q10
割増賃金はどのようにして算出しますか?

■ A10
労務Q10

※次の7種類の手当は、諸手当に算入しなくても良い。
①家族手当
②通勤手当
③別居手当
④子女教育手当
⑤住宅手当
⑥臨時に支払われた賃金
⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
【労働基準法第37条第5項】

 

■ Q11
NPO法人も、36協定を締結する必要がありますか?

■ A11
労働基準法第36条に基づく労使協定(「36協定」という)であり、法人が法定労働時間(1日8時間・1週間で40時間)を超えて労働(残業)させたり、休日労働(法定休日の労働)を命じる場合に必要となります。
「36協定」を締結し、所轄の労働基準監督署へ届出しなければ、法人は労働者に法定労働時間を超えて労働(残業)させることや休日労働を命じることはできません。
労基署へ届出をしないまま、法定労働時間を超えて労働させたり、休日労働を命じると「労働基準法違反」になります。また、36協定届は、協定期間が「1年間」で、毎年届出が必要です。
NPO法人でも、時間外労働をさせる場合には必要となります。労働時間を適正に管理しましょう。

 

■ Q12
保険料等で財政的に厳しいのですが、解決策はありますか?

■ A12
●雇用保険は、週20時間以上の勤務と31日以上の雇用の見込みがあれば加入します。
 (65歳以上の労働者で、2つの事業所の所定労働時間の合計が20時間以上、かつ2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上の場合、労働者本人が申出を行うことで雇用保険に加入できます(「マルチジョブホルダー制度」2022.1.1開始))。
●社会保険の加入について、下記の働き方で対応できる部分があります。
社会保険の加入は、下記の①~②の両方を満たすとき
① 「週の労働時間が正職員の4分の3以上」及び② 「月の勤務日数が正職員の4分の3以上」
社会保険に加入したくない場合は、①または②のどちらかを満たさない働き方をすることで、社会保険に加入しないことが可能ですので、その働き方を検討してみて下さい。
例えば、正職員の勤務時間が週40時間、月の勤務日数が平均21日の法人の場合、「週30時間未満の勤務」又は「月の勤務15日以下」の場合、社会保険の加入は不要です。
(注)資本金のないNPO法人の場合、2022年10月から、労働者数101人以上の場合は以下の条件で、社会保険に加入となります。
 (1)週の所定労働時間が20時間以上
 (2)月額賃金が8.8万円以上(賞与、割増賃金、通勤手当、家族手当等は月額賃金に含まれません)
 (3)2カ月を超える雇用の見込みがある
 (4)学生ではない

 

■ Q13
賞与支給時の社会保険料等の控除について教えてください。

■ A13
毎月の給与支給時に控除する社会保険料は、算定等で決定した標準報酬月額をもとに決まっていますが、賞与支給時に控除する社会保険料は、標準賞与額(賞与額から1,000円未満を切り捨てた額)にそれぞれの料率を乗じて得た額となります。
【健康保険法第45条、第156条1項、厚生年金保険法第24条、第81条3項、4項】

 

■ Q14
定年退職者の社会保険は、どのように扱えばよいのでしょうか?

■ A14
被保険者の退職後継続再雇用(1日も空くことなく同じ会社に再雇用されること)については、いったん使用関係が中断したとみなし、資格喪失届および資格取得届を提出できます。
これにより、再雇用後の給与に基づき標準報酬月額の資格取得時決定が行われ、保険料額等は、再雇用後の給与に応じた額に変更されます。
なお、この取り扱いは、定年退職か否かに関わらず、60 歳以上で退職後継続して再雇用される人に適用されるようになっています。
【平成25年1月25日付け通達】

 

■ Q15
労働保険・社会保険等に加入が必要な対象は誰ですか?

■ A15
労務Q15

 

■ Q16
役員の社会保険加入についての要件がありますか?

■ A16
要件がはっきりある訳ではありません。常勤性がないと判断されれば、入りたくても入れない場合もあります。
最終的には年金事務所の判断となります。なお、代表理事(理事長)の社会保険については、報酬がある以上、加入する必要があります。
また、雇用保険は加入できません。
労災保険についても原則加入できませんが、労働保険事務を事務組合(商工会や商工会議所など)へ委託することにより、「労災の特別加入制度」があり、役員でも労災保険に加入できる仕組みがあります。 

 

■ Q17
産前産後期間中の社会保険料は払う必要がありますか?

■ A17
産前産後休業期間(産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間)中の健康保険・厚生年金保険の保険料は、被保険者本人・事業主両方の負担が免除されます。

 

■ Q18
新規に職員を雇用する際は、どのようなことに気をつければなりませんか?
 

■ A18
A1.次の事項については、必ず書面の交付により明示しなければなりません。
①労働契約の期間に関する事項
②就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
③始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇等
④賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払いの時期に関する事項
⑤退職に関する事項
【労働基準法第15条第1項】
また、パートタイム労働者に対しては、上記の事項に加えて、次の事項も書面の交付による明示が必要です。
①昇給の有無 
②退職手当の有無 
③賞与の有無 
④相談窓口(氏名、役職など)
【短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)第6条と第16条】

A2.雇用保険は「週所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用の見込み(上述以外でも「雇用保険マルチジョブホルダー制度あり」)」、社会保険は「正職員の週の所定労働時間の4分の3以上」かつ「月の所定労働日数の4分の3以上」で加入が必要です(詳細はQ11を参照)。
【労働安全衛生法第66 条】

A3.常時使用する労働者(週の所定労働時間が4分の3以上のパートタイマーを含む)に対して、「雇入れ時の健康診断」を行わなければなりません。

 

■ Q19
スタッフの休憩時間について、定めがありますか?

■ A19
労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩を与える必要があります。
【労働基準法第34条】
また、休憩時間は労働時間の途中であれば、分割して与えることも可能です。

 

■ Q20
マイナンバーの提出が必要な場合はありますか?

■ A20
NPO法人の設立認証申請や役員変更等届出の添付書類として、住民票の写しを提出する場合は、マイナンバー(個人番号)の記載がないものを提出してください。
また、NPO法人でも、従業員を雇用する場合や、講師に謝金を支払う際に源泉徴収する場合等には従業員や講師などのマイナンバーを取り扱う必要があります(講師謝金等がその年中の支払総額が5万円を超えないものについては不要)。

 

■ Q21
雇用調整助成金とはなんですか?

■ A21
雇用調整助成金は、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度です。
景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的な雇用調整(休業、教育訓練または出向)を実施することによって、従業員の雇用を維持した場合に助成されます。
(新型コロナ特例により、売上高減少等の支給要件が緩和され、また雇用保険の被保険者でない従業員も対象となります)

 

■ Q22
有償ボランティアへ支払うのは給与でしょうか?謝金でしょうか?

■ A22
税法上及び労働法上は、有償ボランティアへの対価が“雇用契約に基づく対価であるか、請負契約に基づく対価であるか”が判断基準になります。
具体的には、「事業者の指揮命令下にあるか」「時間的・場所的拘束があるか」「経費の負担があるか」「対価の算出方法」などを総合的に勘案して判断されますが、雇用契約に基づく対価であると判断された場合には給与所得として源泉徴収の対象になります。
当然最低賃金を守らなければなりませんし、労災への加入も必須です。
判断がとても難しい問題ですので、有償ボランティアに関しては、事前に専門家へご相談されることをおすすめします。