会計・税務についてのQ&A

質問

■ Q1 
当法人は特定非営利活動に係る事業しか行っておらず、その他の事業は行っておりません。
この場合は法人税等の申告義務はないと考えてよろしいですか?

■ Q2 
NPO法人の法人住民税均等割の免税手続きはどのように行うのでしょうか?

■ Q3 
今期の法人全体の収入が1,000万円を超えそうです。今期から消費税等の申告をしなければいけないのでしょうか?

■ Q4 
消費税等の計算はどのようにすれば良いですか?

■ Q5 
インボイス制度(適格請求書等保存方式)とはなんですか?

■ Q6
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、簡易課税でも関係してきますか?

■ Q7
NPO法人の場合、市からの補助金は法人税、消費税の課税対象になりますか? 

■ Q8
レストランで料理提供を行いますが、税金の申告は必要でしょうか。
その際、店舗を所有する場合と賃貸する場合で法人税の申告義務に係る取扱は異なりますか?
また、消費税はどうなりますでしょうか?

■ Q9
指定管理を受託していますが法人税、消費税の対象になるのでしょうか?

■ Q10
給与・報酬等の源泉所得税の納税義務の有無や納期限、納付手続はどのようにすればよいでしょうか?

■ Q11
給与・報酬等の源泉所得税の納税義務の有無や納期限、納付手続はどのようにすればよいでしょうか?

■ Q12
謝金や講師料は源泉徴収の対象になりますか?

■ Q13
賞与の源泉所得税はどのように計算したらよいでしょうか? 

■ Q14
年末調整とは、どのようなものですか?

■ Q15
会費の未収金の取扱いはどうしたらいいでしょうか?

■ Q16
NPO法人の交際費はどのように扱えばよいのでしょうか?

■ Q17
NPO法人の予算にない科目が発生した場合、補正予算を立てるのでしょうか? 

■ Q18
減価償却の計算はどのように行えばよいのでしょうか?

■ Q19
NPO法人の職員の退職金制度として中退共(中小企業のための国の退職金制度)に加入し、職員の退職金に充てることにしています。
現在までの中退共への拠出額を貸借対照表に「退職給付引当金」として計上していますが、問題ないでしょうか?

■ Q20
NPO法人の役員の中に公務員が2人いますが、費用弁償は可能ですか?

■ Q21
NPO法人の理事長や監事に役員報酬ではなく、給与を支払うことができるのでしょうか?

■ Q22
新設合併に伴う退職金の取り扱いについて、両法人の退職金制度が違うため、合併前にそれぞれの法人で退職金を精算(支払い)したいと考えています。(法人①:独自積立法人、法人②:中退共)この際の会計処理は、通常の退職金支払いの時と同じ処理で良いでしょうか?

■ Q23
新設合併時の財産目録は、いつ時点のもので作成するのでしょうか。

■ Q24
新設合併した旧法人の給与や報酬に係る源泉徴収について、市町村や税務署への支払報告はいつの時点で行うのでしょうか。旧・新合わせて報告する、で良いでしょうか。(登記予定日(=新法人設立日=旧法人解散日 令和5年4月3日の場合)

■ Q25
NPO法人の新設合併に伴う税務・会計について、どのような手続き等が必要でしょうか?

■ Q26
従業員の過半数が65歳以上で、自主事業として喫茶や手作り商品の販売等をしています。単年度ではわずかに黒字になっていますが、10数年前の収益分を繰り越しており、近年はトントンの状況。市からの指定管理事業のみでは運営が厳しく、今後、収益事業に力を入れたいと思っており、法人税の関係等を確認したいと思っています。

 

回答

■ Q1
当法人は特定非営利活動に係る事業しか行っておらず、その他の事業は行っておりません。
この場合は法人税等の申告義務はないと考えてよろしいですか?

■ A1
NPO法上の「特定非営利活動に係る事業・その他の事業」の区分と、法人税法上の「収益事業・非収益事業」の区分は、全く別物です。
従って、NPO法上の特定非営利活動であっても法人税法上の収益事業に該当する場合もあれば、
NPO法上のその他の事業であっても法人税法上の非収益事業に該当する場合もあります。
NPO法上の区分にかかわらず、法人税法上の収益事業に該当する場合には原則として申告義務が生じますので注意が必要です。

会計Q1

NPO法人は実施する事業毎にそれぞれの事業が法人税法上の収益事業に該当するか否かは、次の1~3の全てを満たすか否かにより判断します。
 1.法人税法施行令第5条に掲げられた34業種(【参考】を参照)のいずれかに該当する事業である場合
 2.継続して行われる場合
 3.事業場を設けて行われる場合
上記を慎重に検討し、法人税法上の収益事業に該当する事業を実施している場合には所轄の税務署に「収益事業開始届出書」を提出します。
また、複式簿記等の要件はありますがメリットが大きいため、同時に「青色申告の承認申請書」の提出も検討することをお勧めします。

【参考】
法人税等法施行令第5 条に規定する収益事業の範囲
①物品販売業 ②不動産販売業 ③金銭貸付業 ④物品貸付業 ⑤不動産貸付業 ⑥製造業⑦通信業 ⑧運送業 ⑨倉庫業 ⑩請負業
⑪印刷業 ⑫出版業 ⑬写真業 ⑭席貸業 ⑮旅館業 ⑯料理店その他の飲食店業 ⑰周旋業 ⑱代理業 ⑲仲立業 ⑳問屋業 ㉑鉱業
㉒土石採取業 ㉓浴場業 ㉔理容業 ㉕美容業 ㉖興行業 ㉗遊技所業 ㉘遊覧所業 ㉙医療保健業 ㉚技芸・学力教授業 ㉛駐車場業
㉜信用保証業 ㉝無体財産権の提供業 ㉞労働者派遣業

 

■ Q2 
NPO法人の法人住民税均等割の免税手続きはどのように行うのでしょうか?

■ A2
NPO法人の場合、収益事業を行っていなければ法人税の申告義務はありませんが、法人地方税(法人県民税、法人市民税)については、均等割の納付義務があります。
法人地方税には法人税等割と均等割があり、法人税割は収益事業を行っていない場合や所得(法人税計算上の利益)が赤字の場合にはかかりませんが、均等割は収益事業を行っていない場合や所得が赤字の場合でも納付する必要があります。
ただし、島根県の法人県民税の場合、収益事業を行っていない場合には「法人の県民税課税免除申請書」を定款、計算書類等を添付して島根県東部(西部)県民センターに提出することにより、均等割を免除する条例(県税条例第8条)があります(島根県の場合、2021年4月1日以後に開始する算定期間分より、前年度に課税免除を受け、かつ、引き続き収益事業を行っていない場合には、課税免除申請書及び均等割申告書の提出を不要とするよう取り扱いが変更されているため、引き続いて収益事業を行っていない場合には、次回2022年5月2日提出期限分から申請書等の提出は不要となっています)。収益事業を行っている場合にも、定款、計算書類等を添付して「特定非営利活動法人の法人の県民税課税免除申請書」を提出することにより、設立の日から3年以内に終了する各事業年度において、所得が赤字の場合に、均等割を免除する条例(特定非営利活動法人の設立を支援するための県税の課税免除に関する条例第3条)があります。(詳細は島根県東部(西部)県民センターに確認下さい)。
また、法人市民税の場合も同様の免除規定がある可能性がありますので、所在地の市町村に減免の有無、手続の内容等について確認することをお勧めします(例えば松江市、出雲市の場合、収益事業を行っていない場合には島根県と同様の規定がありますが、収益事業を行っている場合には島根県と同様の規定はありません)。
また、上記の均等割免除に関しては、「申請期限」が定められていることがありますので、この点にも留意が必要です。

 

■ Q3 
今期の法人全体の収入が1,000万円を超えそうです。今期から消費税等の申告をしなければいけないのでしょうか?

■ A3
消費税等は、次のいずれかに該当した場合に、その年度において申告義務が生じます。
①NPO法人の課税期間(事業年度)の基準期間(通常は前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超えた場合
②NPO法人の課税期間(事業年度)の特定期間(通常はその事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間)における課税売上高、給与等支払額の両方が1,000万円を超えた場合。
また、上記における課税売上高とは、「消費税等の課税対象となる取引(非課税売上を除く)に係る収入額」のことで、主に対価性のある取引に係る収入が該当します。従って、補助金収入や寄付金収入、会費収入等は通常対価性がないため消費税等の課税対象とはならず、これらを除外した事業収入(物品の販売や役務提供の対価など)、備品、車両等の資産の売却による収入等が課税売上高を構成します。
ご質問の場合、補助金収入や会費収入等を除いた、事業収入や雑収入(うち対価性のない収入を除く)が1,000万円を超えていれば消費税等の納税義務が生じる可能性はありますが、実際に納税義務が生じるのは翌々期または翌期から、ということになるので、当該期からいきなり納税義務が生じることはありません。

 

■ Q4 
消費税等の計算はどのようにすれば良いですか?

■ A4
消費税等の計算方法は、「一般(本則)課税方式(「原則課税」ともいいます)」と「簡易課税方式」の2種類があります。
「一般課税方式」では、原則として預かった(受け取った)消費税等から、預けた消費税等(支払った消費税等)を控除して納税額を算定します。このため、預かった消費税等と預けた消費税等の両方を把握する必要があります。また、課税売上割合や特定収入割合の調整等、さらに計算が複雑になることがあります。
「簡易課税方式」では、預かった(受け取った)消費税等の額に一定の割合(みなし仕入率)※を乗じて計算した額を預けた消費税等の額とみなして、これを預かった消費税等の額から控除して納税額を算定します。従って、簡易課税方式では預かった消費税等のみを把握すればよいため、事務負担は一般課税に比して軽くなります。

<※ 事業区分別のみなし仕入率>
会計Q4

例)指定管理料税込み1,100万円(第五種事業)の場合
 預かった消費税等 1,100万円×10/110=100万円…①
 預けた消費税等とみなす額 100万円×50%=50万円…②
 ①-②=納税額50万円

簡易課税方式を選択できるのは、基準期間における課税売上高が5,000万円以下である等の要件を満たす場合に限られますが、当該要件を満たす場合には一般課税方式、簡易課税方式のいずれか有利な方法を選択することができます。

 

■ Q5 
インボイス制度(適格請求書等保存方式)とはなんですか?

■ A5
2023年10月1日から「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が導入されます。適格請求書(=インボイス)とは、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。具体的には、現行の請求書(区分記載請求書)に、「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。

<売手側>
 売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。

<買手側>
 買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。
(※)買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。

インボイス発行事業者になるための申請受付は2021年10月1日から始まっています。免税事業者であるNPO法人が申請する場合、2023年10月1日よりインボイス発行事業者になると同時に、消費税の納税義務が生じます。
当該制度導入の影響として、現在NPO法人が消費税等の課税事業者で一般課税方式(Q4参照)の場合、通常は仕入先が免税事業者であっても請求書等を保存しておけば「預かった消費税」から「預けた消費税」を控除して申告税額の計算ができますが、インボイス制度がスタートすると、免税事業者等がインボイスを交付できないことから、当該事業者に「預けた消費税」は控除できなくなります。即ち、消費税等の納税負担が増えます。

また、現在NPO法人が免税事業者の場合、インボイス発行事業者になって消費税の課税事業者になるか、インボイス発行事業者にならずに免税事業者の立場を継続するか、選択する必要があります。インボイス発行事業者にならない場合には消費税は引き続き免税となりますが、インボイスが発行できないため、取引の相手方は当NPO法人に「預けた消費税」を消費税等申告時に控除できないことになります。従って、主に事業収益に係る取引の相手先が一般消費者のみの場合にはインボイス発行事業者になるメリットは少ない一方、事業収益に係る取引の相手先が事業者の場合には、相手先の消費税負担が実質増えることになるため、この点を考慮して、慎重に検討する必要があります。

 

■ Q6
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、簡易課税でも関係してきますか?

■ A6
<買手側>…自らが請求書等を受け取る立場(金銭等を支払う立場)
簡易課税制度を選択している場合、自らが「預かった消費税」にみなし仕入率を乗じて「預けた消費税」を計算するため(Q4参照)、取引先がインボイス発行事業者か否かを確認する必要はなく、影響はありません。
<売手側>…自らが請求書等を発行する立場(金銭等を受け取る立場)
相手側が消費税の課税事業者で一般課税方式の場合に、相手側が消費税の申告の際に「預けた消費税」を控除できなくなるため、相手側に影響が生じます。
このため、簡易課税を選択している場合にはインボイスの発行業者として登録したとしても自らの事務処理への影響は軽微といえますが、事業収益にかかる主たる取引の相手先が消費税課税事業者で一般課税方式による申告をしている事業者でない場合には、インボイス発行事業者になる必要性は低いと考えられます。

 

■ Q7
NPO法人の場合、市からの補助金は法人税、消費税の課税対象になりますか?

■ A7
法人税に関しては、NPO法人の場合、国や地方公共団体からの補助金は、下記の場合を除き、収益事業として取り扱われることはありません。
・補助金、助成金の名目であっても、物品等の売買や提供するサービス等の対価としての実質を有するもの。
・収益事業(Q1参照)に係る収入または経費を補填するために交付を受けるもの。
また、固定資産の取得または改良のために交付を受ける補助金等については、たとえその固定資産を収益事業の用に供する場合であっても、収益事業の収入とはしないこととされています。従って、当該固定資産に係る減価償却費は実際の取得価額を基礎に計算した額を経費処理することになります。
一方、消費税については、通常、補助金は消費税の課税対象とはなりません(補助金が物品の販売や提供するサービス等の対価としての実質を有する場合等を除きます)。
但し貴法人が消費税の課税事業者であり、一般課税による申告を行っている場合には、当該補助金を財源とした仕入税額控除額に一定の調整が入ることがありますので、注意が必要です。

 

■ Q8
レストランで料理提供を行いますが、税金の申告は必要でしょうか。
その際、店舗を所有する場合と賃貸する場合で法人税の申告義務に係る取扱は異なりますか?
また、消費税はどうなりますでしょうか?

■ A8
法人税に関しては、レストランでの料理提供は法人税法施行令第5条に掲げられた34業種のうち「料理店その他の飲食店業」に該当する可能性が高いと考えられます。従って、この事業を、継続して、事業場を設けて行う場合、収益事業に該当するものとして申告義務が生じることになります。
ご質問の店舗を所有する場合と賃貸する場合の違いについては、いずれの場合も上記の「事業場を設けて」に該当するため、法人税申告上の違いはありません。
また、移動販売やデリバリーによる場合、持ち帰りの場合にも通常は「事業場を設けて」に該当するものと思われます。
一方、催しの際に臨時的、一時的に出店する場合など、単発で継続性のないものについては「継続して行われる」とはいえず、申告義務が生じないケースもありますので、個々の事情に応じた慎重な判断が必要になります。

消費税等に関しては、レストランでの料理提供により対価を受け取る取引は「対価性のある取引」に該当し、課税売上に該当します。
従って、他の課税売上も合わせ、法人全体の課税売上高が1,000万円を超える場合には、翌々事業年度(例外あり。Q3参照)から消費税の申告が必要になる可能性があります。

 

■ Q9
指定管理を受託していますが法人税、消費税の対象になるのでしょうか?

■ A9
法人税については、行政からの指定管理の受託は、法人税法施行令第5条に掲げられた34業種のうち「請負業」に該当する可能性が高いため、収益事業に該当する場合には法人税の申告義務が生じます。
ただし、
①法令・規則や委託契約書等において、当該指定管理が「実費弁償」により行われる場合
②予め一定期間を区切って所轄税務署長の確認を受けた場合
には、当該指定管理事業は収益事業から除外されることになります(法人税基本通達15-1-28)。
なお、上記の考え方は、指定管理の受託に限らず、行政から委託を受ける事業について、一般的に当てはまるものと思われます。

消費税については、基準期間、または特定期間(Q3参照)の指定管理料(指定管理以外に課税売上がある場合にはそれを含めて)が1,000 万円を超える場合には、消費税の申告も必要になる可能性があります。

 

■ Q10
給与・報酬等の源泉所得税の納税義務の有無や納期限、納付手続はどのようにすればよいでしょうか?

■ A10
NPO法人が人を雇って給与を支払ったり、税理士などに報酬を支払ったりする場合には、その支払の都度支払金額に応じた所得税を差し引くことになっています。
そして、差し引いた所得税は、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません。
この、所得税を差し引いて国に納める義務のある者を、源泉徴収義務者といいます。新たに給与の支払を始めて、源泉徴収義務者となる場合には、「給与支払事務所等の開設届出書」を提出します。
なお、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」を提出して、源泉徴収した所得税を半年分まとめて納めることができる特例があります。
この特例を受けていると、その年の1月から6月までに源泉徴収した所得税は7月10日までに、7月から12月までに源泉徴収した所得税は翌年1月20日までにそれぞれ納付することになります。

 

■ Q11
給与・報酬等の源泉所得税の納税義務の有無や納期限、納付手続はどのようにすればよいでしょうか?

■ A11
NPO法人が源泉徴収義務者である場合(源泉徴収義務者についてはQ10参照)、支払った「報酬」については、所得税法第204条、所得税法施行令第320条等に限定列挙されているものに該当する場合には、その支払時に源泉徴収をする必要があります。
逆に、上記限定列挙されている項目に該当しない場合には、源泉徴収をする必要がありません。
謝金の場合、例えばそれが原稿料に対する謝金や講演の講師料としての謝金であれば、所得税法第204条1項第1号の「原稿料」「講演の謝金」に該当し、源泉徴収を要する可能性があります。

 

■ Q12
謝金や講師料は源泉徴収の対象になりますか?

■ A12
ご質問の場合、その情報収集に係る業務の謝金が、所得税法第204 条、所得税法施行令第320 条等に掲げられた「報酬等」に該当する場合には源泉徴収対象となりますが、該当しない場合には源泉徴収対象とはなりません。
ただし、この情報収集に係る謝金が源泉徴収対象となる「報酬等」に該当しない場合であっても、実質的に「給与(アルバイト代等)」である場合には、「給与」として源泉徴収の対象になる可能性があります。
謝金が「報酬等」に該当するか「給与」に該当するかの判断は個別の事情を総合的に勘案して判断することになります。
ご質問の場合、例えば使用者の指揮・監督のもとに一定時間拘束を受け、事務用品等の道具の貸与を受けて資料整理、実験補助、アンケートの配布・回収や研究資料の収集などに従事する場合には「給与」に該当する可能性があり、使用者の直接の指揮・監督及び時間拘束を受けず、自らの道具を用いて交通費等を自分で負担して業務を遂行する場合には「報酬等」に該当する可能性が高いと思われます。

 

■ Q13
賞与の源泉所得税はどのように計算したらよいでしょうか?

■ A13
「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出があった従業員に係る賞与の源泉徴収税額については、源泉徴収税額表の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の甲欄により、前月中の「社会保険料等控除後の給与等の金額」と「扶養親族等の数」を用いて「賞与の金額に乗ずべき率」を求め、賞与の額に乗じて算出します。
また、「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出がない従業員に係る賞与の源泉徴収税額については、源泉徴収税額表の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の乙欄により、同様の方法により求めます(詳細は国税庁「令和○年分 源泉徴収税額表」を参照)。賞与に係る源泉徴収税額の算出は毎月の給与の場合と異なりますので、留意が必要です。

 

■ Q14
年末調整とは、どのようなものですか?

■ A14
年末調整とはいわば従業員の確定申告を従業員個人や税務署に代わって法人が代行する事務です。
NPO法人は、原則として雇用する従業員に支払った1年分の給与・賞与に対する従業員の所得税等を計算し、税務署に対して精算、納税する義務を負います。このため、原則として1年の最後の給与(又は賞与)の支給時に、従業員に支払った1年分の給与・賞与に対応する所得税額を計算した結果と、毎月の給与や賞与から源泉徴収した所得税額の1年分の合計額とを比較し、差額を従業員に精算(還付もしくは追加徴収)する必要があり、当該事務手続きのことを「年末調整」と呼んでいます。
年末調整はいわば従業員の確定申告を代理で行う作業ですから、作業も準備も手間がかかります。事前に当該年分の扶養控除等申告書に変更がないか確認したり、基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書や保険料控除申告書の提出を求めたり、合わせて次年度分の扶養控除等申告書の提出を求めたりする必要がありますので、準備は念入りに行いましょう(年末調整の手続に関する詳細は国税庁「令和○年分 年末調整の手引き」を参照)。

 

■ Q15
会費の未収金の取扱いはどうしたらいいでしょうか?

■ A15
発生主義の原則からすると、会費を未収計上する方が好ましいかもしれません。
ただし、実際にその会費を収受できるか否かが不明な場合には、未収計上することで却って財務書類の利用者が混乱することも考えられます。NPO法人の場合、賛助会費等、実態が「寄付金」に近い性質のものも多いと考えられ、この場合には未収会費納付の可能性が高いとはいえないため、一般的には現金主義により処理されることになると考えます。
従って、その会費の性質や徴収可能性等を勘案し、①納入の確約ができている会費、②決算作業中に現に納入された前年分会費、については未収計上した方が合理的である一方、会費規程等で会費の納付が定められていたとしても、実態として納入される可能性が低い場合には未収計上しない方が合理的と考えます。

 

■ Q16
NPO法人の交際費はどのように扱えばよいのでしょうか?

■ A16
NPO 法人が交際費を計上できないとする規定はありません(収益事業に係る交際費のうち一定額を超える場合には損金不算入となる場合があります)し、非営利法人であっても、その事業を円滑に進めるための費用として交際費を計上することはあり得ると考えます。
ただし、役員、社員、職員等に対して特別の利益を与えないことが定められており(NPO 法第45条第4項ロ)、法人の規模や事業内容に照らして社会通念上妥当な額を超える場合には、監事の監査、理事会や総会若しくは所轄庁の検査等で説明を求められることがあると思われます。

 


■ Q17
NPO法人の予算にない科目が発生した場合、補正予算を立てるのでしょうか?

■ A17
改正前のNPO 法においては、第27条(会計の原則)第1項において予算厳守が規定されていましたが、現在は削除されています。
ただし、島根県内のほとんどのNPO法人は定款において、予算の作成と報告・承認を自ら義務付けているのが実態です。
従って、補正予算を立てるか否か、またどの程度実績が予算を超過する場合に補正予算を立てるのかについては、法人の自治に委ねられていると考えられますので、法人の事業の内容や性格、規模、会員の構成等を勘案して法人が自ら決めることになります。

 

■ Q18
減価償却の計算はどのように行えばよいのでしょうか?

■ A18
NPO法人会計基準では、「貸借対照表に計上した固定資産のうち、時の経過等により価値が減少するものは、減価償却の方法に基づき取得価額を減価償却費として各事業年度に配分しなければならない。」と規定されています。
減価償却費を計算する場合、法人税法の規定を基礎に計算することが実務上多いと思われ、減価償却費が耐用年数に応じて毎年定額となるように計算する方法(定額法)と、償却費が毎年一定の割合で逓減するように計算する方法(定率法)が主流となります。
例えば、建物を期首に取得した場合の定額法による減価償却費(耐用年数は24年と仮定)は、(取得価格-1)÷24により計算します(1円は備忘価額)。

 

■ Q19
NPO法人の職員の退職金制度として中退共(中小企業のための国の退職金制度)に加入し、職員の退職金に充てることにしています。
現在までの中退共への拠出額を貸借対照表に「退職給付引当金」として計上していますが、問題ないでしょうか?

■ A19
退職金は、引当金ではなく、活動計算書の経常費用の事業費又は管理費の「福利厚生費」、「退職給付費用」等として計上する処理が一般的と考えられます。
退職給付引当金とは、退職金制度があるNPO法人が、将来従業員の退職時に支払うことになる退職金債務と、その準備のために外部に積み立てている資産(年金資産)との差額を「退職給付引当金」として計上するものです。
ご質問の場合、「中退共への積み立て額=将来の従業員への退職金債務」と考えられますので上述の差額はなく、退職給付引当金の計上は不要と思われます。

 

■ Q20
NPO法人の役員の中に公務員が2人いますが、費用弁償は可能ですか?

■ A20
NPO法人に係る法律・規定等において公務員が役員に就任できない、または公務員に費用弁償を行ってはならないとするものはありません。
ただし、費用弁償を受ける役員たる公務員の所属する国・地方公共団体に「費用弁償を受ける」ことについて制約が設けられているかもしれませんので、その点について注意する必要があります。

 

■ Q21
NPO法人の理事長や監事に役員報酬ではなく、給与を支払うことができるのでしょうか?

■ A21
NPO法上は、役員が、職員の立場と兼務することにより、職員と同等の条件で給料を受け取る場合には、「役員報酬」としてではなく「給与」として処理することが可能です。
ただし、監事は職員の立場を兼ねることができません。
一方、法人税等上は、理事長、副理事長、専務理事、常務理事、監事等については、使用人兼務役員にはなれませんので、これらの方々に支払う報酬はたとえ給与として支払ったとしても全額「役員報酬」と見做される可能性があります。その他の理事については使用人兼務役員となることが原則として認められます。
法人税法上、原則として役員報酬は毎月定額支給分が損金(税務上の経費)となるため、給与として支給した場合の残業代等の変動分については損金とならない可能性があることに注意が必要です。
なおNPO法上、報酬を受ける役員数は役員総数の3分の1以下である点にもご留意ください。

 

■ Q22
新設合併に伴う退職金の取り扱いについて、両法人の退職金制度が違うため、合併前にそれぞれの法人で退職金を精算(支払い)したいと考えています。(法人①:独自積立法人、法人②:中退共)この際の会計処理は、通常の退職金支払いの時と同じ処理で良いでしょうか?

■ A22
同じで良いです。退職所得として取り扱い、所得税の控除をしても問題ありません。2法人の退職金制度が異なるため、実際は新法人に連続して雇用される人も、1回退職の形をとり、退職金制度を合わせた方が良いです。

 

■ Q23
新設合併時の財産目録は、いつ時点のもので作成するのでしょうか。

■ A23
合併承認決議時の社員総会時の財産目録は、合併までに余程数字が大きく変わらない限り、前年度末の財産目録で良いです。2法人の財産目録の勘定科目等は異なっていても問題ありません。

 

■ Q24
新設合併した旧法人の給与や報酬に係る源泉徴収について、市町村や税務署への支払報告はいつの時点で行うのでしょうか。旧・新合わせて報告する、で良いでしょうか。(登記予定日(=新法人設立日=旧法人解散日 令和5年4月3日の場合)

■ A24
令和6年1月に新法人が、支払報告や年末調整等について旧法人と新法人のものを両方実施します。旧法人分は1月1日~4月2日まで、新法人分は4月3日~12月31日までの分となります。その際、新法人名の後にかっこ書きで旧法人名を書いておくと、税務署や市町村が分かりやすいです。法定調書、支払調書、合計表も、全て3種類(新法人と、旧法人の2法人)必要になります。

 

■ Q25
NPO法人の新設合併に伴う税務・会計について、どのような手続き等が必要でしょうか?

■ A25
青色申告承認申請、収益事業の開始届等税務書類は、届け出期限があるため、速やかに提出しましょう。また、合併時に、土地・建物等の固定資産に含み益があると、適格合併をめぐる論点になる可能性があるので注意を要します。さらに、旧法人・新法人とも決算日が3月31日で、4月3日の合併となると、住民税(市民税、県民税)が1か月分必要となりますので、住民税1か月分の負担を回避するためには、合併日を3月31日にすると良いです。

 

■ Q26
従業員の過半数が65歳以上で、自主事業として喫茶や手作り商品の販売等をしています。単年度ではわずかに黒字になっていますが、10数年前の収益分を繰り越しており、近年はトントンの状況。市からの指定管理事業のみでは運営が厳しく、今後、収益事業に力を入れたいと思っており、法人税の関係等を確認したいと思っています。

■ A26​​​​​​​
事業的に法人税法上の収益事業に該当したとしても、従事者の2分の1以上が65歳以上または障がい者等であり、かつ、その事業が、これらの方の生活の保護に寄与している(経費の大半がそうした方の人件費として支払われている等)場合には収益事業に該当しない場合があります。お尋ねの場合、従業員の半数以上が65歳以上とのことですので、状況次第では収益事業に該当しない可能性があります。ただし、今後大幅な利益計上、若い従業員さんが増える、など状況が変われば収益事業に該当する可能性もあります。
収益事業に該当する場合には税務署に収益事業開始届を提出し、法人税の確定申告書を提出する必要がありますが、この場合にも収益事業にかかる所得(税務上の利益)がマイナスであれば法人税の負担は生じないことになります。法人県民税、法人市民税も基本的には同様の取り扱いとなります。
なお、国税と違って地方税には均等割があり、この部分は収益事業、非収益事業にかからず原則として納税義務があります。NPO法人の場合、申請により均等割の免除・減免を受けることができます(Q2参照)ので、所在地の税務課等にお問い合わせいただくことをお勧めします。